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「………さっきまでは、温かかったんだろうな」
呟いて、指で血を少し救う。
そのまま指を口に含むと、鉄の味が咥内に広がった。
不快には思わない。これは大好きなアリスの味だから。
血と自分の唾液を絡めてゆっくりと飲み下した。
心臓は、双子に取られたから。
せめて、大好きな彼女の一部だったものを。
彼女が生きていた証の、血を。
飲み下した瞬間、彼女の笑顔が浮かんだ。
卑屈で、根暗で、冷たくて、けど優しくて。
とても綺麗な、彼女の笑顔。
「―――……アリス」
アリスが死んでから、初めてアリスの名を音に出して紡いだ。
静かに瞬きをすれば、頬に生温い水が伝うのを感じる。
もしかしたら、哀しくて泣いたのは初めてかもしれない。
アリスの紅い血を見て、ぼんやりとそんな事を考えた。
Side Elliot=March END
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