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山道を登るスピードはさっきよりもやや、速くなったようだ。
ハンドルを握るYは眠たそうな顔をしているが、どこか楽しさを感じさせていた。
標高が高くなって来たせいで、耳がおかしくなってきた。
鼻をつまみ、軽く耳抜きをして、違和感を取り除く。
プツンと音を立てて、耳の違和感はなくなった。
それから幾つかのカーブを曲がって、道にせり出した木の枝の下を通った時、俺の右手は久しぶりに粟立った。
……いる……。
ここ数年感じていなかった悪寒。
久しぶりの感触に、俺は心の窓を意識して、少しだけ開けてみる。
だけど、俺の心の窓は長年使ってなかったから、意外とシブくなってるようで、なかなか開かない。
少し集中してゆっくりと開きかけて後悔した。
全身に鳥肌が立った。
目には見えないまでも、各所に(あれ)の存在が感じられる。
カーブのガードレールの向こうにも、繁った木々間にも、またにある街灯の下にも、道の真ん中にも、それこそ至る所に不気味な気配が点在している。
きっと、ゾンビに囲まれたらこんな気持ちになるんだろうか。
「おい……呼ぶなよ!」
Yが少し苛立った声をあげる。
さすがに坊さんだ。
俺が何をしてるのか分かったらしい……。
「悪い。久しぶりに『窓』を開けてみようかと思ってさ。やっぱりやめとくわ」
「あたりまえ。そういうことは遊び半分にやらない」
……だよな……スマン。
俺は『窓』を閉じた。
……ヤバい!!……『窓』が閉じない!!
「何やってんだよ!! 集まって来てんぞ!?」
さすがに俺でも、相当数の「あれ」が集まりつつあるのがわかる。
既に全身が総毛立っていた。
「ちょっと待った。今閉じるから……」
閉じようと集中する俺を邪魔する何かがいる。
まずいな……結構強い。
「弱い奴等でも、数が集まると危ねえぞ!?」
Yはまだ余裕がある口調で俺に言った。
(あれ)から遠ざかろうとしてるのか、スピードは結構出ている。
……って……ん!?、数!?……確かに数が多すぎる。
「おい、この辺てなんかあったのか?」
俺は割と真剣に集中しながらYに聞いてみた。
「ここ、○鷹山だぞ。ジャンボ機が堕ちたから、ヤバいくらい死んでるんだよ」
……先に言えバカ……。
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