第六夜・心の窓

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山道を登るスピードはさっきよりもやや、速くなったようだ。 ハンドルを握るYは眠たそうな顔をしているが、どこか楽しさを感じさせていた。 標高が高くなって来たせいで、耳がおかしくなってきた。 鼻をつまみ、軽く耳抜きをして、違和感を取り除く。 プツンと音を立てて、耳の違和感はなくなった。 それから幾つかのカーブを曲がって、道にせり出した木の枝の下を通った時、俺の右手は久しぶりに粟立った。 ……いる……。 ここ数年感じていなかった悪寒。 久しぶりの感触に、俺は心の窓を意識して、少しだけ開けてみる。 だけど、俺の心の窓は長年使ってなかったから、意外とシブくなってるようで、なかなか開かない。 少し集中してゆっくりと開きかけて後悔した。 全身に鳥肌が立った。 目には見えないまでも、各所に(あれ)の存在が感じられる。 カーブのガードレールの向こうにも、繁った木々間にも、またにある街灯の下にも、道の真ん中にも、それこそ至る所に不気味な気配が点在している。 きっと、ゾンビに囲まれたらこんな気持ちになるんだろうか。 「おい……呼ぶなよ!」 Yが少し苛立った声をあげる。 さすがに坊さんだ。 俺が何をしてるのか分かったらしい……。 「悪い。久しぶりに『窓』を開けてみようかと思ってさ。やっぱりやめとくわ」 「あたりまえ。そういうことは遊び半分にやらない」 ……だよな……スマン。 俺は『窓』を閉じた。 ……ヤバい!!……『窓』が閉じない!! 「何やってんだよ!! 集まって来てんぞ!?」 さすがに俺でも、相当数の「あれ」が集まりつつあるのがわかる。 既に全身が総毛立っていた。 「ちょっと待った。今閉じるから……」 閉じようと集中する俺を邪魔する何かがいる。 まずいな……結構強い。 「弱い奴等でも、数が集まると危ねえぞ!?」 Yはまだ余裕がある口調で俺に言った。 (あれ)から遠ざかろうとしてるのか、スピードは結構出ている。 ……って……ん!?、数!?……確かに数が多すぎる。 「おい、この辺てなんかあったのか?」 俺は割と真剣に集中しながらYに聞いてみた。 「ここ、○鷹山だぞ。ジャンボ機が堕ちたから、ヤバいくらい死んでるんだよ」 ……先に言えバカ……。
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