第一夜・鏡の中の彼女

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「あぁ。前の橋を壊そうとすると、事故が起こるらしいぞ。そんで、いま御祓いしてるところだって話らしいよ」 「真面目にヤバいっすね……」 ヤバいどころじゃない。 その新しい吊り橋が見えてきたが、橋の周りにうじゃうじゃと青白いモノが飛んでやがる。 主任や店長には見えないらしい。 「舟。あれか?吊り橋って」 「あれですよ」 白いマツダ車はダムの下の小さな橋を通って吊り橋の前の広がった道の側道に止まった。 正直、車から降りたくなかったが、新人の俺が臆病者のレッテルを貼られる訳にはいかない。 さっきも言ったが、俺は別にお化けが怖い訳じゃない。 薄気味悪いだけだ。 だって、死んだ人間の負のエネルギーなんて感じて気持ちいいモノじゃないだろう? 芋虫や毛虫は本気で恐いけど…… 三人は車を降りて、新しい吊り橋に歩き出した。 相変わらず青白い何かが橋の周りをユラユラと飛び交っている。 別に俺たちに気付いた様子も無く、ただ飛んでいる。 新しい橋は、まだ出来立てらしく、綺麗なものだった。 電気の灯りも点いていて結構明るいし、人が10人は並んで歩ける程には広い。 あのユラユラ飛んでるのがいなければ、夜でも景色のいい場所に違いなかった。 ふと見ると、主任が橋の端に寄って、下を覗き込んでいる。 「おぅE。あれが古い吊り橋だぞ」 俺は主任に近づいて、その隣から下を覗き込んだ。 なる程、今にも崩れ落ちそうな木造の古い橋だ。 電気も点いていないから古い橋の上は暗い。 でも、その橋を渡ってる人がいる。 物好きな奴だ。 「古い方の橋、今でも渡れるんですね?」 もちろんあんな場所に行く気はないが、一応主任に聞いてみた。 「いや、あっちは閉鎖になってて渡れなくなってるぞ。あんまり飛び降り自殺が多いんで人が入れないようになってるらしい」 俺は、ぎくりとして、もう一度、古い橋を覗き込んだ。 …………じゃあ、あれは……人じゃないのか……。 人に見えた(それ)はゆっくりと古い吊り橋を進んでいる。 暗くて顔や服装はよく見えないが、スカートを履いている。 確かに……こんな時間に女が一人で危険な吊り橋に来る訳がない。 やっぱり(あれ)は人じゃないんだ。 主任も店長も一緒に覗き込んでいたが、(あれ)に気付いた様子はない。
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