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でも、あんまり調子に乗るとまずいから、この辺にしておいてやるか。
俺はもう一度、ドアのところに行って、一度目の休憩の時に用意しておいたコーヒーとスポーツドリンクを持って、再度ドアを開ける。
そして、何事も無かったようにカウンターまで歩いていく。
「店長甘いコーヒーでいいんですよね?」
店長は心なしか青ざめて、俺に言った。
「さっき、出た……カタカタって音がしたべゃ……やっぱりなんかいるんだここ」
……プッ……ヤバい笑ってしまいそうだ。
「さっきお前が出てってからすぐに肩合わせの音がしたんだぁ。ちょっと見てきて」
……プッ……まずい、こらえきれそうもない。
「はいはい。わかりました。見て来ますよ。どの辺ですか?」
俺はなんとかこらえて、店長の指さす方に向かった。
そこは、俺がさっき店長を脅かす為に背広の肩合わせをした場所だった。
肩合わせの犯人は俺だから、何があるわけでもない。
店長……、あんた真面目に仕事やらないから部下のおもちゃになるんですよ。
「店長。とくに何も…」
ない、と言いかけた時、礼服のコーナーから、あのカタカタが聴こえてきた。
店長は、さっきのままカウンターにいる。
礼服コーナーには誰もいないはずだった。
カタカタカタカタッ……カタカタカタカタッ……。
「うわ!? まただ!!」
ホントに怖かったんだろう。
店長はカウンターから回り込んで、こっちに走って来た。
カタッ……カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタッ…カタカタ……。
俺は、店長とは逆に礼服コーナーに歩いて行った。
もし、(あれ)が肩合わせをしているとしたら、ハンガーが勝手に動いているように見えるのだろうか? それって魔法みたいに見えるじゃん!
俺は礼服コーナーに行ってみたが、その時にはカタカタが止まっていた。
「お前!祟られるぞ!?」
後ろで店長が叫んだけど……いいや、とりあえず無視しとこう。
しばらく、待っていたが、カタカタは鳴らなかった。
俺は待ちきれなくて、自分で肩合わせをしてみた。
カタカタ……。
「うわぁ!?」
俺が出した肩合わせの音にビビって、店長がまた叫ぶ。
店長……あんた怖がり過ぎですから……。
肩合わせの最中、何気なくハンガーをずらした時だった。
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