第一夜・鏡の中の彼女

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車に戻った俺(正確には俺と店長だ)は、ホッと一息ついて、またタバコに火をつけた。 まだ足元には踊り狂ってる青白いモノがいくつか残っている。 全く忌々しい…… 店長は本当に気分が悪いらしく、青白い顔でやはりタバコに火を付けていた。 「2人とも怖がりだな?」 主任がタバコをくわえたまま、ケラケラと笑いながら、運転席に乗り込んだ。 車の中に紫煙が立ち込めていた。 窓を開けて空気を入れ換える。 車を発進させた主任は一人、何も無かったかのように俺に聞いてきた。 「なに、なんか見えたの?」 「いや、別になんでもないんですけど、なんか足元がザワザワしませんでした?」 自分の見たモノを正直に話して嘘つき呼ばわりされるのは心外だから、とりあえず適当にごまかしておいた。 車は順調に来た道を戻り、少し大きめな道に出た。 それまで、ずっと静かにしていた店長が言葉を発した。 「舟、ちょっと車止めて!真面目に気持ち悪いわ!」 主任は言う通りに、車を路肩に車を止めた。 停車すると、店長は勢いよくドアを開けて走って行った。 体をくの字にしているところを見ると……吐いているらしい。 ……だよな……俺でもさすがに気味悪かったもんな…… 「あははは!!……店長、大袈裟だよな……」 ……主任……見たり感じたりしてたら、笑い事じゃないんです…… そう言いたかったが、俺まで大袈裟人間にされるのは、勘弁して欲しいから、引きつりながら笑うしかなかった。 店長が戻った後、主任はすぐに車を出して、また帰路についた。 17号バイパスにさしかかると、俺たちの乗る白いセダンの後ろには大型のトラックが着いた。 「眩しいなあ……」 主任がそう言ってルームミラーを下に下げる。 ……!? その時、ルームミラー越しに、(あれ)が見えた。 その影はボブカットだった。 後ろのトラックのライトが照らされていたおかげで顔までは見えないが、はっきりボブの影が映っている。 焦って隣を直(じか)に見たが、何もいない!? もう一度ルームミラーを見ると、やはり(あれ)の影がくっきり見えた。 ……まじかよ……。 隣に乗ってやがる……。 「いやあ、やっと気分が良くなってきたさぁ」 店長が脳天気に言う。 ……店長……(あれ)は現在進行形なんですけど……あんた本当に分かってるの?
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