第一夜・鏡の中の彼女

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思った事の内、全部を口にしないのが出世の道だから、俺は何も言わなかった。 もちろん、隣にまだ座っていらっしゃる(あれ)の事も黙っていた。 「でも、ヤバかったよな?E!?」 そう言って俺の方を振り向いた店長の顔が凍りついた。 「!?……やばいよ。乗ってるよ~。ボブの女だよ~やばいよ~コイツ橋から落ちて顔打ってるよ~気持ち悪いわ~」 ……店長…あんた、ちゃんと見えてたんですね。 良かったよ、俺、顔まで見えなかったし。 顔が、ぐちゃぐちゃになった女の幽霊見ても気味悪いじゃん? あんたが(あれ)の顔を教えてくれたから、俺、それからルームミラー見るのやめました。 もしかしたら美人かと思って、何度か見直してたんだけど、本当に見えなくて良かったですよ。 その後、(あれ)は店長の寮のベッドの上に一週間ほど滞在して、消えたそうですね。 いやあ、一週間ぐちゃぐちゃな顔見ても精神的におかしくならなかった、あんたを俺、本気で尊敬します。 あんたは消えたと思ってるけど、多分(あれ)は、あんたからなかなか離れないでしょう。 どうか(あれ)とお幸せに。 長生きして下さい。 本気で祈ってあげます。 追伸。 O店長。本当に仕事ではお世話になりました。 まだ生きててたら、あんたラッキー池田ですね。 でも、まだ独身なんだろうなぁ…(あれ)、あんたのところにまだいるでしょ? 意地張らないで、早くお祓い行ったほうがいいってば。 あれはやばいから…… 第一夜・終わり
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