340人が本棚に入れています
本棚に追加
授業中、不意に窓に視線をやればそこには無数の水滴がつき、風景を歪ませる。
先生のつまらない話や黒板をなぞるチョークの音は耳障りで仕方なかった。
やはり、人工的な明かりでは雨の湿気に負け気持ちが滅入る。
腕を置く机も妙な滑りを作り、皮膚にくっついてしまう。
湯村はそれでも自分の腕を枕に眠りに付こうとした。
しかし、たまたま向けた顔の先に瑠偉がいて、その細い線をした体つきを見ると胸が高鳴り出す。
三年経っても、黒板を見るその目も表情も変わっていない。
湯村は知らず知らずのうちに、瑠偉をその目の中に入れていたのだ。
そして、ゆっくりまぶたを下ろし眠りにつく。
規則正しい雨の音を聞きながら。
最初のコメントを投稿しよう!