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 それから湯村が起きたのは教室の中が騒がしかったからだった。 眠気眼で周りを見渡すと、教室の後ろのスペースで野球をやる村田達の姿。 ほうきをバット代わりに、ボールは配付されたプリントを丸めた物を使っていた。 まだ眠さがとれず、再び眠りにつこうとしたときだった。 ほうきが空を切る音と同時に鈍い音がする。 そして、「あっ!」っという声と共に一気に雰囲気が凍り付く。 湯村は伏せかけた頭を上げ、皆の視線の先を見た。 そこで瑠偉が目を押さえている姿が目に写る。 「み、三井ごめんな!大丈夫か?!」  ボールを打った張本人である村田が急いで瑠偉に駆け寄る。  瑠偉はうつむきながら目を押さえ、村田のほうを見ようとしない。 村田はただオドオドして他の生徒に意見を求めるかのような目をして見せる。 しかし、皆冷めた表情をして見せたり知らんぷりをしているばかりで雰囲気は悪くなるばかりだった。
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