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「三井……?ごめんな……?」 「……大丈夫」  瑠偉は目を手でおさえたまま小さく呟く。  そして、そのまま床に落ちたボールを拾うと村田に渡す。 その瞬間、瑠偉は勢いよく顔を上げると笑顔で村田を見た。 「ナイスバッティング!」  冷めた雰囲気を引き裂くように明るい声でそう言うと皆を見渡し、微笑んで見せた。  皆の心配を拭い去ろうしたのだろう。 その瑠偉の心遣いが伝わったのか皆に安堵の表情が戻っていく。 そして、徐々に雰囲気はいつも通りに戻っていった。 しかし、そこで瑠偉が教科書やノートを抱えて教室を出て行く姿を見ると心配になってくる。 湯村は皆に少しだけ聞こえるように「腹が痛い」と言うといかにもトイレに行くように教室を抜けて行った。  廊下を渡る途中までは腹を抱えて演技をし、クラスの連中がいないのがわかると急いでロッカーへ向かった。 ロッカーに着くと、自分のロッカーの前で座り込む瑠偉がいる。 鏡を覗き、何かを気にしているようだった。 「三井?」  湯村の声に驚き振り向く瑠偉。  鏡をロッカーにしまうと立ち上がり、湯村に視線を送る。 目につくのはボールの当たった目。 その目は赤く充血し、あの笑顔に比べてひどいものだったことを物語る。 それがわかると、湯村は少しだけの気の毒さと苛立ちを覚えずにはいられなかった。
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