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「気休めにしかならないけど…」 「そんなことないよ、さっきより痛みが引いた気がするもん」  顔を上げた瑠偉はやっぱり笑顔で、それが当たり前のようであるのかとさえ湯村には思えてしまった。  お互い交わす言葉も見つからず黙り込む。 視線を置く場所も定まらず、二人共目をそこら中に這わせていた。 雨の優しい音だけが二人の代わりに会話を続ける。 皆の輪の中でなら気軽に話せていたことを思い出させるように。 「三井」 「湯村君」  湯村も瑠偉も話し出すタイミングが一致し、ロッカーに響き渡る。  幸い他の生徒はおらず、二人に向ける視線は一つもなかった。 「な、何?三井?」 「あっ!うん!あのさ、このまま雨が止まなかったら……止まなかったらね!一緒に帰ろ?」 「えっ……?」 「でも!私!ちょっと用事があるから待っててくれるならでいいから!っていうか、嫌ならいいからね!」  湯村の顔一つ小さな瑠偉。  うつむいてしまうとその表情を見ることは出来なくなってしまう。 ただ、胸で組まれた手を見ているだけで瑠偉の気持ちがわかるようだった。
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