340人が本棚に入れています
本棚に追加
湯村はそれを見て、瞳を強く閉じる。
教会を出るとその頬に流れる涙を拭う。
深く深呼吸をすると、ポケットから小さな小瓶を取り出した。
それはこの日のためにもらった物。
その中の液を人差し指につけると、自分の唇に塗りたくる。
そして、木々の間から見える太陽に懺悔と祈りを捧げ、教会に入り直した。
ゆっくり、瑠偉の眠る長椅子な向かう。
そして、瑠偉の顔が見える位置で腰を下ろすと瑠偉の顔を眺めた。
再び溢れそうになる涙を振りはらい、その顔を見つめ直した。
「ごめんな……、瑠偉……」
湯村は眠る瑠偉に顔を寄せ、唇を重ねる。
唇を離すと瑠偉の唇が動き、舌で自分の唇を舐める。
湯村はそれを見た瞬間、我慢していた涙が溢れ出て来てしまった。
「ごめん……!瑠偉……!ごめん……っ!」
胸に重なる瑠偉の手を握る湯村。
しかし、さっきとは違い、温もりが消え出していた。
湯村の泣き声だけが、教会を包む。
徐々に冷めてく瑠偉の体温。
湯村は涙を拭わず瑠偉の顔を見た。
冷たくなった頬に両手をあて、その表情を見た。
そこで気づく。
瑠偉の閉じたまぶたから涙が落ちるのを。
「瑠偉…っ!」
湯村は無我夢中で瑠偉を抱き締めていた。
不意に零れる太陽の光の中を。
瑠偉といた日々を記憶の中に巡らせながら――
最初のコメントを投稿しよう!