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「いいや!三井と相合傘なんかしてたら敵を作りそうだから」
「敵?」
「三井を好きな人達だよ」
「いないよ!今まで付き合ったことないし!」
「嘘でしょ?」
「本当だよ!彼氏いない歴十八年だよ!」
二人で笑い合うとため息をつく。
それと同時に、信号が青に変わる。
二人でそれを見ると、瑠偉が湯村に手招きをする。
湯村は恥ずかしながらに日傘の下に入り、横断歩道を渡った。
いつの間にか、音楽は流れ切っており、聞こえるのは雨の音だけだった。
「三井」
「えっ?いいのに」
「いいから」
瑠偉から日傘の柄を受け取ると身を寄せる。
濡れないようにするにはそうするしかないはずなのに、その後二人は会話が続かなかった。
アスファルトの凹凸に流れる雨水にも目もやれず、時折触れる肩が熱を帯びる。
その感覚に、湯村は違和感を感じずにいられなかった。
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