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 登校して来る生徒達の視線を感じる余裕もなく校門を跨ぐ。 グランドの土がぬかるみ、二人の歩いた跡を刻んで行く。 そこに雨が降り込みやがて、その跡を消していってしまった。 不意に立ち止まり、踵を返す瑠偉。 湯村は、瑠偉が濡れぬよう瞬時に傘を動かし雨を防ぐ。 瑠偉の視線には消えかける足跡があり、それを少しだけ見て湯村に視線を向けた。 「何か寂しいね、足跡が消えるの」 「えっ?何で?」 「なんとなく……、そう思っただけ」  瑠偉は小さく微笑むと下駄箱に行こうと促す。  湯村は、瑠偉と同じことを考えていたのかと思うと少しだけ嬉しかった。 下駄箱に入ると傘を閉じ、水滴を払う。 湯村がそうしている間に、瑠偉は制服に着いた水滴をハンカチで払っていた。 「三井、ありがとな。傘の中、入れてくれて」  湯村がそう言うと瑠偉は手を止め、微笑みながら首を振る。  そして、何かに気付いたように目を見開くと湯村に歩み寄る。 すると、瑠偉は湯村の制服についた水滴を払い出したのだ。 「いいよ!三井!」 「うぅん、気にしないで。私が気になっただけだから」  瑠偉は湯村の背中まで回り、丁寧に拭って行く。  湯村には、ハンカチに瑠偉の温もりが伝わるようで少しだけ恥ずかしくなった。 そして、瑠偉が湯村の正面に出るのを見て傘を手渡す。 「靴、履き替えなきゃね」  瑠偉はそう言うと自分の下駄箱に向かう。  ただ、湯村だけはその場から動けず、瑠偉の背中を目で追ってしまっていた。 我に返ったときには、瑠偉の隣りには友達らしき女子がいて笑い合っている。 その横顔にもまた魅入ってしまい、瞬きすら忘れていた。
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