安西敏

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 危険を察知していたのなら、頭の良い早智は何らかの対策をしただろうし、万が一、殺されたのだとしても、そうだとわかる手がかりを残したのではないか・・・。  漠然とそんなことを思って、鈴はふと、違和感を覚えた。 (あれ・・・?)  何かひっかかる。 亡くなった後、早智の部屋に行った時と同じ違和感だ。  だけどそれがなんなのか、鈴にはどうしてもわからなかった。 「どうした」  顔をのぞき込むようにして、零が問う。  なんでもない、と首を振って、鈴は話の先を促した。 「おそらく鴨居の浮気の原因を知った後、小堺さんは鴨居が接触した女生徒達に会っている。 これは僕の情報網から得た情報だから、警察が認識しているかどうかはわからないが」  まあ、調べたらすぐにわかることだ、と零は独りごちた。 「確認できている情報から言えることは、どうやら小堺さんは安西を訴えようとしていたと言うことだ。 ・・・強姦の場合、被害者が加害者を訴えることは残念ながら少ない。 同意がなかったと証明することが難しいのと、事情聴取の中で再び、被害者がつらい思いをしてそれに耐えなければならないからだ。 しかし小堺さんは、自分が被害届けを出すことで、他の女生徒達の無念をも晴らそうとしたんだ」  初めて聞く話ばかりで、そんなことも知らなかったのかと再び涙ぐむ鈴を気遣ってか、零は一度話を切り、間をおいたようだった。
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