九音寺 零

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「あ、あの……! えと……あれ?」  勢い呼び掛けたものの、名前がわからない。  何と呼んでいいのかわからなくてまごまごしていると、少年の背が何か言った。 「え?」  聞き返すと、やっぱり不機嫌そうな表情の少年が、はあっとわざとらしくため息を吐いてこちらを向いた。 「九音寺。九音寺零(クオンジレイ)だよ。笹丘さん」 「私の名前! 何で?」 「さあ。どうしてでしょう」  面倒臭そうに少年……零は首を傾けた。  答える気はないようだ。  何だかむっとする態度だが、そこはあえて目を瞑る。 「九音寺君。」  改めて呼び掛けて、息をつめる。  自分が言おうとしていることが、ものすごく、荒唐無稽で馬鹿馬鹿しいもののように思えた。  それでも、鈴は続ける。真実が知りたかった。 「九音寺君。ユーレイを見てください」
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