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「猟影さん……」
「猟影……」
そこに立っていたのは、高麗を中庭に連れて来たまま他の官吏に声をかけられ席を外してしまっていた猟影だった。
「これは……邪魔をいたしましたかな?」
何故か慌てている様子の二人を見て猟影は軽く首を傾げ、意味有り気な含み笑いをしてみせる。
高麗と寛劉は二人揃って無言のまま慌てて首をぶんぶんと横に振った。二人の無言の否定を汲んで猟影はまた軽く微笑む。
「要らぬ推察を失礼いたしました…………姫神殿、先程は急に席を外し申し訳ございません」
「あっ……いえ、大丈夫でした。寛劉さんにも会えましたし」
不意に真面目な顔に戻って頭を下げる猟影。彼女に顔を上げてもらいたくて、高麗は慌ててその非を否定した。
白虎派にとって敵方にあたる瞬耀に会ったことや、その瞬耀に良くして貰ったこと、寛劉が助けてくれなければ自分が危険な目にあっていたかもしれなかったことなどは少なくとも今は言わぬ方が良いだろうと思い、黙っていることにした。
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