前章-四神之序

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瞬耀はぽつねんと取り残されてしまった。 思わぬタイミングでの決意表明に呆気にとられた様子で揉遁の背中を見送ってから、また思い出したように着替えの続きを済ませる。 「おいおい、随分な自信だなぁ……」 妹はわざわざそれを言いに来たのだろうか。 取り残されたかのように見えた瞬耀は、俯き加減になったその顔に嘲るような笑みを浮かべていた。 殊更ぶ宣戦布告。 “姫神”が来るとなれば、それが冷戦状態にあった四神帝の皇位継承争いに終止符を打つ可能性もある。何故ならば、姫神達は自らが栄光を授ける王を選ぶからだ。 だが、反対に姫神の存在はそれ事態がこの争いを激化する引き金ともなりうる。 「姫神は要らない」と言ってきた揉遁の真意はわからないが、瞬耀には瞬耀の狙いがあった。 玉座だけではない、鏡華の国でもない。 この皇位継承戦に於ける狙いが。 「……忘れたとは言わせない」 声を低めて呟く。 怨声は呻くように震えた。 この争いを好機に、彼はある人物の仇を討とうと腹に決めていた。 (俺は赦せない。 力を得た朱雀の怒りの前に……美しき業火に焼かれてしまえばいい)  
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