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「……おやおや……誰かと思えば。兄上」
「…………」
樹の上に座っまま高麗が瞬耀のことをぼんやりと考えていると、聞き覚えのある声がした。
瞬耀を呼び止めたらしいその声は、今彼等が戻ろうとした王宮の方から逆に中庭に向かって来ていたらしい白虎帝翠馨のものだった。
昨日出会った時と同じようにうっすらと不敵な笑みを浮かべている翠馨の視線と、不意に険しくなった瞬耀の視線とが屋外と室内とを結ぶ扉の下でぶつかり合う。
「そんなにお粗末様な布きれを召して、いったいどこの難民かと思ったよ」
「…………煩いな」
「ふふっ、嫌だなぁ、そんな冷たい目で見ないで欲しいのだけれど? 私は最愛の兄上のお帰りを心待ちにしていたのだよ」
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