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高麗は先ほどの黒い衣装を腕に抱えながら考える。
――…きっと、私がさっきの会話を何か誤解しているんだわ。
高麗が疑いもなく宮廷の料理を口にした時の翠馨の微笑、先ほど服を拾ってしまった高麗を助けてくれた時の瞬耀の笑顔、そのどちらも頭から離れない。
それらは偽りには見えなかった。
仲が宜しく無いことは重々知っていたが、それでも二人それぞれに会ってみるとどちかが悪人と見ることは到底出来なかい。
彼女は自分の見聞きしたことを気のせいにしてしまおうかと思った。
此方へ向かっていたようにみえた翠馨もどこかで道を曲がったのだろうか、あの扉の下にはもうだれも居らず、中庭はまた静寂に包まれた。
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