太陰之章 参

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枝に掛かった服を掴もうとした右手は虚しく空を掻き、バランスを崩した高麗は頭から真っ逆さまに地面に向かっていく。 「きゃぁぁぁぁっっ!」 「“花よ、蔓よ。少女を助けよ!”」 その瞬間。 誰かの鋭い一声が響き渡り、地中から轟々たる勢いで緑の蔦葉が萌えいでた。 忽ち巨大化したしなやかな蔓が高麗にするりと絡み付くと、彼女の躰は落下速度を緩め、地面にぶつかる寸での所でついに動きを止める。 「な、な、な、なな……!」 恐怖と安堵と驚きとのあまり、漏れる声はもはや言葉になっていない。 ――…「何ですかこれは!」…… 「ふーっ、危ない危ない。危うく麗しのお嬢さんを落っことすとこだった……お怪我はありませんか…………って、高麗さん!?」
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