458人が本棚に入れています
本棚に追加
/523ページ
枝に掛かった服を掴もうとした右手は虚しく空を掻き、バランスを崩した高麗は頭から真っ逆さまに地面に向かっていく。
「きゃぁぁぁぁっっ!」
「“花よ、蔓よ。少女を助けよ!”」
その瞬間。
誰かの鋭い一声が響き渡り、地中から轟々たる勢いで緑の蔦葉が萌えいでた。
忽ち巨大化したしなやかな蔓が高麗にするりと絡み付くと、彼女の躰は落下速度を緩め、地面にぶつかる寸での所でついに動きを止める。
「な、な、な、なな……!」
恐怖と安堵と驚きとのあまり、漏れる声はもはや言葉になっていない。
――…「何ですかこれは!」……
「ふーっ、危ない危ない。危うく麗しのお嬢さんを落っことすとこだった……お怪我はありませんか…………って、高麗さん!?」
最初のコメントを投稿しよう!