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「あ……ありがとうございます、それも二回も……」
その香りにふと我に返り改めて自分の今の体勢を振り返ってみると、今更ながらに照れるような恥ずかしいような気持ちになり、胸が高鳴ってくる。
一方、寛劉は寛劉で高麗の安全は確認したものの、次の言葉を続ける前に妙な沈黙を要した。
腕から伝わる絹越しの体温にこくりと唾を飲む。
「…………。……あーぁ、鈍くさい上に考え無しとは、手を焼かせるぜ全く。」
ややあって漸く寛劉の口からでた言葉は結局、そんな意地悪い台詞だった。
「だ、だって寛劉さんが脅すから……!」
「あのなぁ。あんなの、冗談に決まってるじゃねぇか」
寛劉は呆れ返ったように溜め息をつく。
「じょ、冗談って……」
溜め息をつきたいのはこっちだ! と、高麗は思った。だが、ここは黙っておく。
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