太陰之章 参

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「助かる?」 樹から落ちそうになっていた事は本当に知らなかったのだろうか、猟影は不思議そうな顔をする。 「あ、じゃあ俺そろそろ仕事に戻るわ。雑用溜まってたんだった」 ここでその問いを遮るように寛劉がそう切り出し、二人に向かってひらひらと手を振る。 これ以上長居すると余計な事を口走ってしまうかも知れないし、先程の高麗と自分のやりとりを思い出すとなんとなく居心地の悪い気持ちに苛まれるのだ。 「わかりました。ありがとうございます寛劉殿、後のことは私めが」 「はい、それじゃあ……お仕事頑張って下さいね」 猟影と高麗がそう返事をすると、寛劉は足早に王宮内へと帰っていく。 中庭に残された二人はあの大きな木の下から、王宮より突き出た縁側のような部分へと場所を移した。
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