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「いえ、偶然衣を見つけたので拾って掛けたのですが……その為に樹に登ったわけじゃなくて、登ったのは私の気分からです」
高麗は嘘は吐かなかった。
猟影は特に疑問を感じた様子でもなく、それを聞くと小さく笑い出した。
「わ、私なにか可笑しいこと言いました!?」
「いえ……っふふ、御無礼を。少し意外でしたので」
猟影は必死に笑いをこらえている様子で少し肩が震えている。何がそんなにおかしいのか、慌てたところで高麗には何も分からない。翠馨と同じで笑いのツボが全く掴めないのだ。
「意外……でしたか?」
「えぇ、意外ですよ。私は先代帝の頃より一族の者が仕えていた為に今までに何人もの後宮の姫君達を拝見して参りました……ですが、絹衣のまま木登りをなさるような姫君は初めてです」
「わ、私は後宮の姫君ではありませんからっ」
高麗の頬が何故かカァァッと熱くなる。
反論してからそれに気付いて高麗は困ったように両手の平を頬にあてた。
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