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「……この世界の、争い事を……止めて、くださると?」
“姫神は元々この世界の争いを止めるために蓬莱より派遣された者”という高麗の答えに、猟影の目がハッとしたように見開かれた。確認するように問うた声は微かに震えている。
一呼吸置いてから猟影は声を振り絞るようにして続けた。
「姫君様より直々にそのような御言葉をいただけるとは、それが本当ならば恐れ多いまでに有り難いこと……」
バサリ、と音がした。
「りょ、猟影さん!? そんな……」
高麗は驚いて自分の足元を見た。
そこには先程まで目の前にいた猟影が倒れ伏すようにして地に額付いている。
深い緑の髪が顔を隠し、長い官吏装束の袖から覗く左右の掌を地面に押し当てたまま十本の指先をぴったりとそろえていた。
「御願いでございます……“姫神殿”、間違いなく近々帝位争いが激化し戦乱の世となりましょう。どうかそれを思い止まらせていただきたいのです」
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