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気がつくと真っ暗闇に立っていた。
男は前に立って語り始めた。
「人生1度きりなんて寂しいではないですか。ですから、過去に戻って違う運命をたどる。つまり、別の人生を送るんですよ。」
何となくは理解できた。
「いいだろう。今の人生なんて興味ない。過去でも何でも行かせてくれ。」
「分かりました。いつに戻りますか?」
そう聞かれるとなんだか不安と好奇心の両方に襲われた。
「そうだなぁ、ヒロミと知り合う前の高校時代。3年の夏が良いかな。」
「かしこまりました。それではお送りします」
男がそう言うと周りが急に明るくなった。
「村田君!!」
大きな声で自分をよぶ声が聞こえて、ハッとして体を起こした。見ると高校時代の担任だった久保田先生だった。
顔を見るのは3年ぶりだった。
「お久しぶりです、先生」
「何がお久しぶりよ!寝ぼけてないでちゃんと授業受けなさい!!」
先生のその一言にクラスのみんなはドッと笑い始めた。
『これは夢か?』
自分の頬を誰にも見られないようにつねったが、痛かった。
現実だ。
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