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人は歴史を繰り返す。
何度も再現しようとする。
今より少し未来の日本国。東京より少し離れた村に一人の少女がいた。大空芽衣、十六歳の高校生だ。この時代、高校までが義務教育化され男女の差なく高校を卒業できるようになる。それがいいのか悪いのかこの世界情勢になっては誰にもわからない。
「山菜を採りに行ってくるね」
彼女は家族‥‥とは言ってもこの時間にいるのは母だけなのだがその母に伝えて家を出た。
これから日が長くなっていく季節だ。山にはワラビやフキが生えている。これらを採って夕食の足しにするのだ。
芽衣は慣れた道をかけのぼる。道端の山菜を種類も見ずに引きちぎる。そして山頂の少し手前で立ち止まった。
「昌志!」
大声を出して彼女は少しだけしまったと思った。もし警備の者に見つかったらやっかいだ。
なにせ今は戦争中。戦況は一進一退が伝えられるがどこまで本当の情報か信用はできない。成人した男子は戦地に行き、学生は戦争の授業という名目で軍需工場に派遣される。平和なときのように趣味をいそしんだり恋愛をするなど軽々しくできるような状態ではなかった。
しかし、今、山には二人しかいない。それでも周囲を気にしながら体を寄せあう。
[続]
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