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やがてカラスの鳴き始める時間になった。
そろそろ帰らねばならない。山菜をカゴの三分の二ほど入れてアリバイ作りも怠らない。
「それじゃ行くね。明日は‥‥工場だから来れないかも」
それでも昌志は嫌な顔一つしなかった。上の命令に逆らえないのは皆同じだったし、仮病を使ってまでも来いとは言えない。
そのかわりなるべく早く本を『調達』しておくと約束をした。
登るときの半分のスピードで山を降りる。家からはご飯を炊く煙が上がっていた。
新しい朝がきても弁当を片手に向かうのは工場だ。動きやすいように服装はジャージと決められている。おかげでもう二年生なのにセーラー服は新品のようにぴかぴかだ。
芽衣たちの学年は軍服を作る仕事をしている。質もよくない布を裁断しミシンをかけていく。
そこへ二年生全員が会議室に呼ばれた。こう、みんながそろって呼ばれる時はたいてい異動の時だ。今まで色々な工場を渡り歩いてきたのだ。誰も驚かない。一カ所に長く置かないという決まりがあるらしい。
[続]
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