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ズキ、と鋭い痛みが走る。
ぞわりと冷や汗が背を伝い流れていくのに神経が集中した。
ドクンドクンと胸が脈打ち、呼吸をすることが難しくなっていく。
そんな状況から逃れたい一心で、賢治は思わず叫んだ。
『止めろよ!』
ビクリと目前にいる密の身体が揺れ、ピタリと密の手が止まる。
指先から肘まで、まるで感電したかのようにビリビリと痺れたのだ。
密の瞳は驚愕の意が含まれて、自分の手のひらを開いたり閉じたりして異常を確かめる。
そんな密の些細な行動に賢治は気づかず、離れた手がチャンスだと言わんばかりに怒鳴った。
『俺をここから出せ……っ!』
「お前――!?」
パキンと何かが割れた音が密の耳奥で聞こえた。
そして密は、突風が自身の体を正面へと吹いてきたような、そんな強い力に押されて後方に飛ばされた。
――ありえない。
賢治の耳にそんな声が聞こえた頃には、密の姿や壁はどこにもなかった。
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