日常>非日常

7/15
前へ
/24ページ
次へ
   ズキ、と鋭い痛みが走る。  ぞわりと冷や汗が背を伝い流れていくのに神経が集中した。  ドクンドクンと胸が脈打ち、呼吸をすることが難しくなっていく。  そんな状況から逃れたい一心で、賢治は思わず叫んだ。 『止めろよ!』  ビクリと目前にいる密の身体が揺れ、ピタリと密の手が止まる。  指先から肘まで、まるで感電したかのようにビリビリと痺れたのだ。  密の瞳は驚愕の意が含まれて、自分の手のひらを開いたり閉じたりして異常を確かめる。  そんな密の些細な行動に賢治は気づかず、離れた手がチャンスだと言わんばかりに怒鳴った。 『俺をここから出せ……っ!』 「お前――!?」  パキンと何かが割れた音が密の耳奥で聞こえた。  そして密は、突風が自身の体を正面へと吹いてきたような、そんな強い力に押されて後方に飛ばされた。    ――ありえない。    賢治の耳にそんな声が聞こえた頃には、密の姿や壁はどこにもなかった。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加