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闇の中に眠る月は何も照らしはしない。
目を開けぬ限り、闇を切り裂くほどの優しげな光は地へと届きはしないのだから。
闇はそれを知ってか代わりに目を見開き、地を見据える。
そこには狂喜にも似た笑みが浮かび上がり、闇はそれからゆっくりと手を伸ばす。
相手に気取られぬようにゆっくりとゆっくりと、それでも確実にその手は近づいていく。
時折相手がピクリと動けば手はピタリと止まる。
そしてやや時をおいてから再びゆっくりとゆっくりと動き出す。
やがて手は目的の相手へと届くと、瞬時に首を絞めあげた。
相手は驚きと苦しみ、恐怖から飛び起き闇の手を目視するとがむしゃらにもがく。
ギリギリと闇の腕を捻り引っ掻くが、闇はそれに反応せずに絞めあげていく。
抵抗していた手も力なくだらんと垂れて相手は死んだ。
そうして闇は、哭いた。
もういない月を思って……。
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