不変>変化

2/5
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
   闇の中に眠る月は何も照らしはしない。  目を開けぬ限り、闇を切り裂くほどの優しげな光は地へと届きはしないのだから。  闇はそれを知ってか代わりに目を見開き、地を見据える。  そこには狂喜にも似た笑みが浮かび上がり、闇はそれからゆっくりと手を伸ばす。  相手に気取られぬようにゆっくりとゆっくりと、それでも確実にその手は近づいていく。  時折相手がピクリと動けば手はピタリと止まる。  そしてやや時をおいてから再びゆっくりとゆっくりと動き出す。  やがて手は目的の相手へと届くと、瞬時に首を絞めあげた。  相手は驚きと苦しみ、恐怖から飛び起き闇の手を目視するとがむしゃらにもがく。  ギリギリと闇の腕を捻り引っ掻くが、闇はそれに反応せずに絞めあげていく。  抵抗していた手も力なくだらんと垂れて相手は死んだ。  そうして闇は、哭いた。  もういない月を思って……。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!