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路地裏に入りこんだ一匹の野良犬がいた。
野良犬はそのまま足を進めていたが、ピタリと止まる。
そこはゴミが散乱している以外何もない場所。
その一角には同じく野良犬が何匹も、何十匹も輪をつくるようにして座っていた。
その中央には何もない。
歩いてきた野良犬は、堂々とした足取りでその中央へと向かう。
途端に吼え出す周囲の犬たち――。
「鎮まりたまえよ、諸君」
中央の犬はそう鳴く。
途端にそれはやんだ。
「私ごときにこのような歓迎をせずともよいことだ。そうだろう?」
「そいつぁ違うな」
スッと何匹かの犬が、一歩輪から外れ声をかける。
「お前は俺たちの主だ」
「貴方は恐怖の帝王」
「君は人間よりも賢く」
「あんたは何よりも尊い」
「僕の尊敬する方で」
「私が畏れる御方」
そしてすべての犬が叫ぶ。
「この血この肉この心!すべては御身に捧げる覚悟!我らは貴方様の狗となりましょう!」
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