15人が本棚に入れています
本棚に追加
その脇道へと入った瞬間、まるで夢や幻を見ているような、何かに囚われ傍観せざるをえないような状況――そんな感覚に少年は身を震わせた。
風が吹いて木の葉を飛ばす。
木の葉はゆらゆらと漂いながら、ぽとりと地に落ちた。
その瞬間、パチパチと言いながら緑色だった姿を赤く染めあげる。
「あ、燃やしちゃった」
くすくすと笑いながら少女は消し炭になった木の葉を踏みにじる。
足を退けると、それは粉々で見る影もなくなっていた。
ふと少女は視線を感じ、地に落としていた瞳を上にあげる。
「貴方、だれ?」
少年と少女の視線が混じり合い、少年は口を開いた。
「俺は、稲沢……稲沢賢治」
「そう。それで何の用?」
「え?」
最初のコメントを投稿しよう!