15人が本棚に入れています
本棚に追加
賢治が聞き返すと、少女は誰が見ても分かるくらいあからさまに眉を寄せた。
そして、つい、と病的なまでも白くて細長い指で賢治を指差す。
「用がないのなら、何故貴方は此処に居られるの?」
「用ってほどのもんじゃねーよ。俺はただバイト遅れそうだったからこの脇道通っただけだけだし」
ほらあそこから入って、と賢治は振り返る。
ちょうどあの場所から走って来てここに入ったのだと。
そう言おうとしていた。
「って、なんでなくなってんだよ!?」
振り返ってみると、賢治の目線の先には入ってきたはずの道がなかった。
"存在していなかった"の方が言い方は合っているのかもしれないが。
唖然としている賢治を見て、少女は呆れにも似た表情を賢治へと向けた。
そして指が下ろされ、首が軽く左右へと振られる。
最初のコメントを投稿しよう!