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しょうがないとでも言いたげなその少女の様子に、賢治は少し腹がたった。
「おい、お前こそ誰だよ」
「貴方に名乗る筋合いはないわ」
「人の名前聞いといてお前が名前言わないってのはねーだろ!」
「お前お前って煩いわよ」
「そりゃお前が名乗んねーからだろ」
賢治が鼻で笑うと、少女は自分が失語したのが分かったのか一瞬怯んだ。
少しの間ができ、少女は一度目を閉じるとあからさまにため息を吐き出して言った。
「……密。これでいいでしょう?」
「みつ?珍しい名前だな。漢字は?」
「秘密や密林のみつよ」
どこから出してきたのか、椅子に腰掛け足を組みながら密は答える。
お世辞にも背は高いとはいえないのだが、足が長いのだろう、座り方がさまになっていた。
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