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「じゃぁ、真面目に言おうか」
銃口を向けているにも関わらず、一歩前へ進んでポケットに両手を入れる。
「本当は、こんな仕事をするのは不本意なんだろう」
俺の顔を見据えると、微笑を湛えたまま目だけがその表情を変えた。
「君は優しい人間だ。今から殺す人間に、最後の言葉を許すんだからね」
「せめてもの情けだ。同じ事をする奴は少なくない」
「確かに、映画なんかでも良く聞く言葉だよね。だけど気付いていたかい?」
また一歩前へ進んだ姿を確認しながら、引き金の感触を確認する。
「僕にその言葉を掛けたとき
泣きそうな顔してたよ」
銃を持つ感覚が消えた。
ピピピピピ――――
携帯電話のアラームで目が覚めた。
(夢……?)
やけにリアルな夢だった。
汗を吸って肌に密着した服を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。
(現実で会う前に夢で再会するとは、なんともロマンチックな話だな)
これから会いに行く親友の顔を思い出しながら、着替えたスーツの内側に拳銃を忍ばせると、うだるような暑さの中へ足を踏み入れた。
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