2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 窓に打ち付ける雨と、頭上に響く雷を聞きながら晩酌に耽る。  朝から怪しげな雲行きを見せていた空が、とうとうその機嫌を損ねたのがつい先ほど。  それからは下降の一途を辿るばかりの天空と、荒れる景色を見るのは非常に愉快だ。  子供の頃から雷を怖がることがなかった。  むしろその頃から、これを部屋から眺めるのが好きだった気がする。  外に居れば災難でしかないが、こうして守られている状況下ではその災難は降りかかってこない。  そんな安心感からか、ぼんやりと窓に打ち付ける雨を眺めていたら、今まで以上の雷鳴が頭上で轟いた。  同時に部屋中の明かりが消える。 (停電か……)  これほどの雷雨だ、停電になっても仕方ないだろう。  さほど驚きもせずにお気に入りの日本酒を一気に喉へ流し込んだ。 (不思議な感覚だ)  暗い部屋の中を照らす明かりは雷光のみ。  点いては消えるを繰り返すその自然の電球は、人間の意図を全く汲もうとしないのに、何故か人口の光よりも安心感を与えてくれる。  そんな思考をする自分は何と幼稚で滑稽か。  実に愉快だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!