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「そこまでよ!刀を捨てなさい!!」
大樹があきらめかけたとき高い声が部屋に響きわたった。
大樹が動きの止まった男の陰から声のした方を見ると
おみよがいつの間に拾ったのか、刀を男の首に突きつけていた。
「この小娘がぁ…」
悔しそうに呻きながら男が小刀を手放す。
その隙に大樹は男に左のストレートをかまして立ち上がる。
「ありがとう、助かったよ」
大樹が笑いかけるとおみよもホッとしたように笑った。
「緊張しましたぁ」
「そらそうだわな」
話しながら晋太郎の様子を窺うと
最後の1人を貫いた刀を、動かなくなった男から抜き取ったところだった。
「晋太郎様ぁ」
おみよが呼びかけると晋太郎がバッと振り返る。
晋太郎のさっきの男と同じような目つきに大樹は背筋が寒くて身が竦んだ。
…がそれも瞬間、すぐに元通りの優しさすらみえる目つきに戻る。
「お、無事だったか」
返り血を浴びて真っ赤になった顔で笑うのが薄気味悪いのは変わらなかったが……
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