準備期間

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ヒカリは泣く事を止めなかった。 そんなヒカリの腰に、空がそっと手を当て、駅まで誘導した。 俺は… 何もしてあげられず… 何の言葉もかけてあげられなかった。 3人とも同じ駅で降りた。 俺とヒカリの家は、すぐ近所だが、空は少し離れた所にあった。 「空、今日はありがとう」 「全然」 「もう、ここでいいよ」 「空はあっちでしょ」 泣き止んだヒカリが、作り笑顔で空に話した。 「え、うん」 家まで送ると言いたげだったが、俺がいるせいか渋々言葉を飲み込む。 「じゃあヒカリちゃん何かあったら電話してね」 3人共携帯を持っていて、番号も互いに知っているが、毎日学校で会う為、普段は使わない。 まぁその携帯電話もあと2ヶ月で使えなくなるけど…。 「うん、わかった」 「ありがと」 「じゃあまた明日…」 「明日は来ないよね?」 「じゃあまた学校で」 「うん、バイバイ」 空が手を振りながら俺の方を振り返る。 「陸、あと頼む」 「わぁーてるよ」 「じゃあまた明日な」 「うんバイバーイ」 空と別れ、ヒカリと自宅を目指す。 この道を2人で歩くのは何年ぶりだろうか? こんな出来事がなければ一緒に歩く事さえなくなった。 あの頃はずっと3人でいると強く信じていたのに。
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