準備期間

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「ご、ごめん…」 「私今日いろいろあって…その…」 「落ち着いたら学校行くから…」 「今日は、ありがと」 「じゃあね…」 そう言い残し、ヒカリは家の中に入って行った。 まだ頭が混乱している…。 俺は、今まで彼女が何人かいた。 だからキスも初めてじゃないけど。 今までとは違う。 何かこう…うまく言えないけどドキドキした。 「帰ろ」 俺は一言呟いて歩きだした。 ヒカリの家から、少し戻って角を曲がればすぐに俺ん家。 テクテク歩いて角を曲がる。 まだ頭の整理が出来ない。 角を曲がって気持ちを落ちつかせようと立ち止まる。 「何で俺にキスしたんだ…」 「……」 「そ、空」 角を曲がって、少し先にいたのは空だった。 辺りは暗くなっていたが、背丈や金髪ですぐに空だと言うのが分かった。 「あ…あぁ」 「いや、違うくて」 「ヒカリが、今日おかしくて…ほらお父さん亡くなって」 「分かるだろ?」 「……」 「お前…ちょっ…何か勘違いしてるだろ?」 「マジで違うから」 「おいら、なーんも言ってないよ」 「ヒカリちゃんが心配だったから付いてきただけ」 「別に勘違いもしてないから」 嘘だろ、いつもと雰囲気違うだろ! 「いや、本当に違うんだって」 …何が違うんだろ? …キスしたのは、事実。 「だからー別に気にしてないっス」 「ヒカリちゃん帰ったから俺も帰るな」 「明日学校で…」 「陸、またな」 「…」 空は俺に背を向け、軽く手を上げて暗闇の中へ消えていった。
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