準備期間

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空は上半身裸になり、脱いだ制服をポイッと投げた。 そのまま、後ろを向いた。 俺は、空の背中を見て言葉を失う。 空の背中には、無数の火傷の後が… そう、ちょうどタバコを消した跡のような。 数は、100箇所くらいあるだろうか…。 その傷跡は、文字になっていた。 『ゴミバコ』 空の背中には火傷の跡でそう刻まれていた。 俺は言葉が出なかった。 空はいつも能天気で明るく振る舞っていた。 俺は、空が泣く所なんか見たことない。 俺が、空にくだらない相談しても笑顔で答えてくれた。 自分の方が辛くても、後回しにして、俺の小さな悩みを真剣に聞いてくれた。 そんな空が、初めて話してくれた重い悩みに対して、俺はいい言葉も、してあげられる事も見つからなかった。 「空…」 「俺は絶対にあいつを許さない」 「絶対に見つけ出して殺すんだ」 空の固い決意…俺はもう止める事が出来ない。 でも… 「空ちょっと待てよ」 「同じ西日本なら殺す事は出来ないだろ」 言い忘れていたが俺や空、ヒカリが住んでいる所は西日本軍領土だ。 「うん、わかってる」 「親父は女作って東に引っ越したから確か東日本軍に居る筈。」 「もし西日本に居たとしても誤砲とか言って撃ち殺してやんよ」 「…」 初めて見せる鬼のような空の顔。 普段はニコニコ、ヘラヘラの空の顔をここまで変えるのは並大抵ではない。 それだけで、空が見てきた地獄の断片が伺えた。
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