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合格発表の日、結那は一人で高校までやってきた。ほんの少し、あることに期待して、時間まで考えながらきていた。
(まだかな…)
周りを見渡しながら、結那はある人を待った。
(最近探してばっかりだな…)
あの事があってから、結那と憂樹は話すことが少なくなっていた。でも、結那はいつも憂樹の姿を追っていた。そのことに気付いたのは、中学を卒業する少し前だった。
今日も、憂樹に会えないかと期待していた。この高校にしたのも、半分は憂樹の影響だった。親同士が仲がいいので、憂樹の情報は聞こえてくる。
「憂樹くん、〇○高校にするんだってね~」
という母親の言葉を聞いて、結那の気持ちはこの高校に傾いていったのだった。
その時、後ろから数人の話し声が聞こえてきた。振り向くと、憂樹が友達数人とやってきた。
「おぉ~受かってる、受かってる」
ちょっと喜んだように言ってはみるが、小さな町の高校で定員ギリギリなので、みんなほぼ受かるとは思っている。
「あ、結那?」
「憂樹?受かってた?落ちてた?」
「受かるだろ~」
「憂樹でも受かったんだから、私が受かるわけだよね~」
「何それ。一人できたの?」
「そうだよ」
「友達いないんじゃない?」
「いるよ~あえて、一緒に来なかったの」
「へぇ~」
久しぶりに話したと思った。春休みもはさんで、こんなにしっかり話したのは、本当に久々だ。
(やっぱり、憂樹とはこうじゃなきゃね)
結那はちょっとホッとしていた。
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