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結局兼平は三日間をかけて目的の場所へと辿り着いたのだが
-この村跡は…
兼平は動揺を隠す事が出来なかった。村の跡には無数の白骨化した死体が転がっていて住居には刀や弓で傷つけられた跡が残っていた。兼平がその様子を呆然とした表情を浮かべて見ていると
「誰だ、貴様は…」
背後から何とも言えないが感情が籠もった声が聞こえてきた。兼平にはそれが、非難しているかのように思えた。
「この村は一体…」
「質問に答えろ。貴様は一体何者なのか聞いている」
兼平は後ろを向いた。そこには長身で長い髷を結った若者が腕組みをして立っていた。腰には見事な装飾が施された鞘に収められた長刀が刺さっており、着物は漆黒の闇に匹敵する真っ黒な色をしたものだった。
「拙者、将軍家に忠誠を誓いし藤原兼平と申す」
「将軍家に忠誠を誓いし者か…ならば貴様はここで死ぬがいい!!」
男は長刀を抜刀すると片手で軽く縦に振った。空気が揺れて刀を振った時の独特な音が響いた。
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