第二章

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「ああ。今は亡き俺を育ててくれたお爺さん、お婆さんは俺に優しい人間になれと毎日のように言っていた。そんなお爺さんとお婆さんが亡くなった時、俺は自分が深い闇に堕ちていくような気がした。それだけ二人の存在が俺にとっては大きかったんだろうな」   男は先程までの突き刺さるような口調ではなく思い出しているかのような小さく低い声で話をしていた。兼平ではなく自分が思い出そうとしている為に話しているのだと兼平が感じたぐらいである。   「俺はかつて住んでいた村を発つことにした。あてもない放浪の旅。そんな旅に勇敢な三匹…いや三人の仲間を付き合わせる訳にはいかず、一人で家を出ていったのだ」   いまさら言うまでもないが家来は犬、猿、雉のことである。
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