第一章、「姫と騎士と異世界」

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◆ ◆ ◆ ◆ 「ありがとうございました~ありがとうございました~」 舞台を終え、ロミオ役の由美やら他の役者達が体育館の出入口の外に立って、来館者達を握手とお辞儀で迎える中… ジュリエット役の少女は見当たらない。 「ありがとう、次の舞台もよろしくね~。はぃはぃ、サインね?ありがとう、はい~ユーミンっと~はぃはぃ、またね~」 由美はサインをし、笑顔で手を振ったが… 心此処に在らずで、体育館の中をしきりにチラホラと覗き込んで居る。 「姫の奴…また逃げたな」 由美が小さく漏らす。 姫とは… 先程の観客の太い声で歓声を受けたジュリエット役の少女の事。 どうやら、舞台後の握手会には参加しないのが日常… 否、舞台後常茶飯事と言うべきであろうか?一重に定番中の定番という事だ。 「由美先輩、ロミオ素敵でしたぁ♪」 「歩香~見てくれたぁ?ありがとうね、入場券の確認とか仕事押し付けちゃって…本当にありがとう」 体育館の中から歩香が嬉しそうに飛び出し、由美にギュッと抱き付いた。 そんな周りから… 黒くギスギスした視線が飛んで来て居る事を、気付かないのか気付いて居るのか。 「あれぇ?また姫先輩は来てないんですかぁ?」 「仕方ないよ、アイツはファンとか舞台なんて…どーでも良いんだからっ」 つーん、と由美は外方を向いてしまったが、ちゃんと来館者達を握手で送り出す切り替えの早さには歩香も脱帽だった。 「また見に来ます!!」 最後の来館者が出て行ったようだ。
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