第一楽章 すべての始まり

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 変な声と共に、彼は目を覚ました。 「…みんな、どこ行ってるんだ」 まだ頭がぼんやりしていた。ノロノロと左右を見渡す。クラスメイト達は、続々と教室を出ていた。 「体育館。始業式よ」 「あー」 分かったのか、分かってないのか曖昧な返事が返ってきた。  江摩がため息混じりに、 「先行ってるよ?ちゃんと来なさいよ」 「分かったよ…」 「よろしい」 江摩はそう言って、みんなの後に続いた。  教室に残された正彦は、 「…俺も行くか」 まだ頭がボーっとしていたが、彼は席を立ち教室を出ようとした。  …したのだが、彼は足を止めた。後ろから、 「…いい景色ー」 と聞こえたからだった。 「…?」 正彦は不思議に思って振り向いた。 「あっ…」 窓からニ列目。その真ん中の席。 「藤山さん…」 そこにいたのは、正彦と同じように、担任の諸連絡の途中に寝てしまった浅美だった。机ごと、長い黒髪が顔を覆っていた。 「空も…とっても、キレー…」 それは寝言だった。 (ずいぶんレベルの高い寝言だな…) 正彦は内心ツッコミを入れる。  続けて、 (それにしても、どんな夢見てるんだ?) そう思った。 「名物もおいしいし…」 浅美はなおも寝言を言っていた。 「…うーん」 (起こすべき…だよな) 正彦は頭をかきながら浅美の方へ近寄った。  そして、 「あのー、藤山さん?」 彼女に声をかけた。 「なーんですかぁー」 返事が返ってきた。どうやら彼女の夢の中で誰か、話しかけてくるキャラが出てきたようだ。 (話しかけてるのは、現実の人間なんだけどなー) 正彦は困りながらも、彼女を起こす作業を続けた。 「起きて。体育館に移動だよ!」 身体を揺り動かした。 「体育…館?」 やっと浅美は目を開いた。机に突っ伏していた顔を上げる。 「…起きた?」 正彦が浅美の顔を覗き込んだ。 「はわ…?」 まだ開ききらない目で彼女は正彦に視線を返した。 「…。みんな、体育館に行ったけど」 彼女の目にドギマギしつつ、正彦は言った。 「えっと…」 浅美は辺りを見回した。 「…あ。ももも、もしかして、もうみんな行っちゃっいました?」 やっと状況を理解した浅美は、ものすごく慌てた。 「うん。でも、まだ出たばっかりだよ」 「あっ、そうですか…」 彼女は一旦落ち着くと、しばらくして、 「って、それはそれで、早く体育館に行きましょう!」 パッと立ち上がって、ドアへ向かう。  と、 「待った!」 正彦が浅美を呼び止めた。 「…?どうかしたんですか」
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