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変な声と共に、彼は目を覚ました。
「…みんな、どこ行ってるんだ」
まだ頭がぼんやりしていた。ノロノロと左右を見渡す。クラスメイト達は、続々と教室を出ていた。
「体育館。始業式よ」
「あー」
分かったのか、分かってないのか曖昧な返事が返ってきた。
江摩がため息混じりに、
「先行ってるよ?ちゃんと来なさいよ」
「分かったよ…」
「よろしい」
江摩はそう言って、みんなの後に続いた。
教室に残された正彦は、
「…俺も行くか」
まだ頭がボーっとしていたが、彼は席を立ち教室を出ようとした。
…したのだが、彼は足を止めた。後ろから、
「…いい景色ー」
と聞こえたからだった。
「…?」
正彦は不思議に思って振り向いた。
「あっ…」
窓からニ列目。その真ん中の席。
「藤山さん…」
そこにいたのは、正彦と同じように、担任の諸連絡の途中に寝てしまった浅美だった。机ごと、長い黒髪が顔を覆っていた。
「空も…とっても、キレー…」
それは寝言だった。
(ずいぶんレベルの高い寝言だな…)
正彦は内心ツッコミを入れる。
続けて、
(それにしても、どんな夢見てるんだ?)
そう思った。
「名物もおいしいし…」
浅美はなおも寝言を言っていた。
「…うーん」
(起こすべき…だよな)
正彦は頭をかきながら浅美の方へ近寄った。
そして、
「あのー、藤山さん?」
彼女に声をかけた。
「なーんですかぁー」
返事が返ってきた。どうやら彼女の夢の中で誰か、話しかけてくるキャラが出てきたようだ。
(話しかけてるのは、現実の人間なんだけどなー)
正彦は困りながらも、彼女を起こす作業を続けた。
「起きて。体育館に移動だよ!」
身体を揺り動かした。
「体育…館?」
やっと浅美は目を開いた。机に突っ伏していた顔を上げる。
「…起きた?」
正彦が浅美の顔を覗き込んだ。
「はわ…?」
まだ開ききらない目で彼女は正彦に視線を返した。
「…。みんな、体育館に行ったけど」
彼女の目にドギマギしつつ、正彦は言った。
「えっと…」
浅美は辺りを見回した。
「…あ。ももも、もしかして、もうみんな行っちゃっいました?」
やっと状況を理解した浅美は、ものすごく慌てた。
「うん。でも、まだ出たばっかりだよ」
「あっ、そうですか…」
彼女は一旦落ち着くと、しばらくして、
「って、それはそれで、早く体育館に行きましょう!」
パッと立ち上がって、ドアへ向かう。
と、
「待った!」
正彦が浅美を呼び止めた。
「…?どうかしたんですか」
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