貧乏神に

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私は母親が夜中に泣いているのを知っていた。女一人で三人の子供は大変だったのだろう。            ある夜中に母親が包丁を持って私達兄弟をしばらく見つめていたのを覚えている。            そりゃそうで、年末年始に餅一つ買えない家庭に幸せなど微塵の欠片も母親は見つけられなかったのだろう。            それもすべてあの貧乏神の父親のせいだと兄弟は理解した。                  私は今だにクリスマスと正月が嫌いで、特にクリスマスの日にはあの日以来、必ず不幸な一日になり、今だに楽しいクリスマスを過ごしたことなどない。    「クリスマスにうちの家にはサンタは来ないが代わりに必ず貧乏神はやって来るね」        と、おねぇちゃんが毎年クリスマスになると言っていた。            そのおかげだろうか、私の息子や娘には頑張って、良い父親に私はなろうと、そして家族は仲良くしなければいけないことをあの貧乏神の父親は、身をもって私に教えてくれた。    父親にはそんなつもりはなかったのたろうが、今はそれが貧乏神からのクリスマスの贈り物になってしまった。
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