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それはこの日の夕方。
健一郎は町のパトロールに出かけるため、交番の前に置いてある自転車にまたがった時、後ろから声をかけられた。
「藤原、今日は早めに帰って来いよ。資料の整理するから」
「はい、分かりました」
健一郎は陣内に軽く会釈をして、自転車のペダルを踏んだ。
いつも見回っている道を健一郎は少し早いペースで進んでいた。この日は風が強く、向かい風の時は自転車を漕ぐのも精一杯だった。
そして、町を一回りしてそろそろ帰ろうかとした時、どこからか女性の叫び声が聞こえてきた。
「どろぼうーー!!」
健一郎はすぐに声の方向見ると、老婆が地面に倒れ込んでおり、その先に上下黒いジャージで黒い帽子をかぶった男が、老婆のバッグを持って走っているのが見えた。
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