719人が本棚に入れています
本棚に追加
「これにて裁判を終了する」
裁判長その言葉を聞き、健一郎は顔を上げて目を開いた。
そして、健一郎は後ろにいた2人の警察官に両脇を掴まれながら、裁判所を後にしようとした時、ふと傍聴席のほうに目をやった。
そこには、ハンカチで涙を脱ぐんでいる母だけではなかった。少女の慰霊碑を持った遺族らしき人物が、健一郎の事をずっと睨んでいる。
健一郎はその遺族と目が合った。その瞳には憎しみや悲しみ、恨み辛みが詰まっていたが、今の健一郎には何も感じられなかった。
ただ、遺族に対して一礼をして、裁判所を出た。
最初のコメントを投稿しよう!