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そして、裁判官は判決理由を語り始めた。しかし、判決理由など今の健一郎には意味のないこと。
黙々と喋る裁判官を健一郎は見る事が出来ずに俯いていた。
『…………どうして、俺はこんなについてないんだろう』
健一郎は昔から運の悪い人生が続いていた。今年で26歳になる健一郎は、3歳の時に父を病気で亡くし、母に女1人で育てられた。
父との思い出はほとんど無く、母には随分と世話になっているのに、この自分の運の悪さにここまで苦しめられるとは思いもしなかった。
小学生の頃は、友達と遊ぶ時もいつもジャンケンで負けてしまう。クラスの席替えなんて、ほとんど一番前の席に座っていた。
高校の頃なんて、自転車のタイヤのパンクはしょっちゅうだった。
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