1人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
喪失
ある日気づいてしまったんだ。
世界はとても悲しみに包まれて、絶対的な幸せでいる人はすくなくて、その中でも本当に幸せな人はさらに少なくて・・
俺はある日思ったんだ。
こんな世界なら無くなったらいいと。
次の日から、変化があらわれた。
多分望んだ世界になるために、おきた事なのだろう・・
身近なものから一つずつ消えていった。
消えていったものに周りの人は気づかなかった。
というより、それは初めから無いものとなっていた。
初めの日は椅子だった。
次の日にパン
その次の日にはイヤホン
机、本、洗濯機、布団、ライター、地球儀、エアコンまでが消えたとき、家をでてホームレス生活を始めた。
このままいても、きっと家も無くなるに違いなかったし、いずれ、職もなくなるならこの場所にいなくてもいいだろうと言うのが結論だ。
幾日たったか、わからなくなったが確かに世界から毎日物は消えていった。
それでも心は虚無の中にあって、何が消えても困りはしなかった。
ある日、ホームレスのもう一人の男の人が来た。
何にも話さなかったがそれでも別によかった。とりあえず顔の見える位置で、生活をしていたがそれでもよかった。
「いずれ、こいつも消えるのだろう。」
しばらくたって
「最近物が無くなって困るな」
と男が言った。
物は初めから無かったようになってるはずだった。
「物が無くなる?」
「ああ、こないだまではパンがあったはずだった。」
「何故わかる?」
「何故無くなったものがわからない?」
不思議そうな顔をされたから話すのをやめた。疑われるのも関わるのも苦手だ。
最初のコメントを投稿しよう!