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ここまでで十分に驚愕な事実なのだが、更なる衝撃が私を襲った。
「因みに、八親等以内の直系血族との接触は重罪だ。しかしまぁ、この柳井慎二に至っては、アンタとの間は一親等。どんな罪状が下るか」
警官は憐れむように言った。
私はその言葉を咀嚼する。彼は未来人で、私の血縁。しかも一親等しか離れていない。導き出される答えは一つ。
彼は未来の私の息子だ。
「皆さん、私達がコイツを連行すると同時に、ここでの今までの記憶は完全に抹消されます」
年配の警官が演説でもするかのように、大きな声を店中に響かせた。
店内はざわつき、客や店員の誰もが怪訝そうな顔を浮かべた。
その警官はぐるりと店内を見渡してから、私を見て止まった。
「貴女に限っては、えー二ヶ月と三日ですね。その間の柳井慎二に関する記憶も抹消です」
この頃になると私は驚くことも忘れてしまった。
彼との二ヶ月の記憶が一切なくなると言う。
彼との愛の二ヶ月間。
いや、息子との二ヶ月間。なるほど愛の二ヶ月間だ。
私はその時、どんな顔をしていただろう。あまりに複雑な感情があまりに複雑に入り乱れ、私はどうにかなってしまいそうだった。
警官二人は私達に別れの時間も与えないつもりらしく、早々と三輪車に乗り込み始めた。
それから閃光と轟音と。
薄れゆく意識の中、私はあることに気が付いた。
せっかく未来の旦那の名字を知れたのに。
視界が暗転した。
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